新喜劇タイムズ

吉本新喜劇についていろいろ考えるブログです。

吉本新喜劇全国ツアー2018について考える

 いよいよ3月21日(水・祝)から吉本新喜劇全国ツアー2018がスタートします。

 

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吉本興業/よしもとクリエイティブ・エージェンシー

 

 

 

 今回のツアーは2009年以来約9年ぶり、4人の新喜劇座長を率いて東日本を中心に全国を巡業するというかなり挑戦的なものになっています。

 今回の全国ツアーの目的は何なのか、そして全国ツアー期間中における本公演への影響などについて考えてみたいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

4座長と個性的な座員達が堂々参戦

 今回9年ぶりに行われる全国ツアーは、吉本新喜劇がテレビで放送される機会が少ない東日本を中心に23都道府県24カ所を巡ります*1

 

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※2018年3月12日現在

吉本新喜劇オフィシャルサイトに掲載されている情報を基に作成。今回の全国ツアーがいかに吉本新喜劇の東日本への普及を強く意識して行われるものであるかがよく分かる。

 

 

また前回のツアーでは新喜劇以外のメンバーも参加しましたが、今回のツアーでは基本的に出演者は新喜劇座員のみ。いわば本場の新喜劇をそのまま各地で上演するというかなり挑戦的なものになっています。加えて”レジェンドゲスト”が一人、そして各地の住みます芸人が新喜劇の舞台に登場する予定です。

どんな公演になるのか楽しみですね。 

 

 

《出演者》 

 【座長】

   すっちー、酒井藍小籔千豊、川畑泰史

 【男性座員】

   Mr.オクレ島田一の介青野敏行吉田裕松浦真也今別府直之タックルながい。、カバ、佐藤太一郎、瀧見信行、諸見里大介太田芳伸、清水啓之、ジャボリ・ジェフ、音羽一憲《4月21日(土)の沖縄公演より参加》

 【女性座員】

   岡田直子、井上安世、金原早苗、服部ひで子

 

合計22名+レジェンドゲスト・各地の住みます芸人

 

 

 

 

7000円の高額チケット…。満足度はいかに? 

 

 今回のツアーで驚いたのが、チケット料金が東京・大阪公演のみ前売券において7000円の大台に設定されていた事です。当日券に至ってはプラス500円となる為、7500円という高額な料金設定となっています。

 

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各地の公演におけるチケット料金を示した表。前売券において2000円もの開きがある事が分かる。

 

 

昨年行われた「辻本茂雄 絆で30周年記念ツアー」でのチケット料金の最高額は6500円でした*2。つまり今回はそれをさらに500~1000円上回る料金が設定されたのです。これは吉本興業が概ね良好な客入りを想定した額として初の7000円台を記録しました。 

 

もしこの料金設定で実際にツアーの客入りが好調だった場合、吉本新喜劇の特別公演、特にお正月スペシャルにおけるチケット料金に影響が出る可能性があります。 

 

果たしてこの高額料金に見合う十分な満足度は得られるのか、状況を注視する必要がありそうです。

 

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よしもと新喜劇お正月スペシャルのチケット料金は前回(2016年)の反省を踏まえて据え置かれたが、今回のツアー次第では6000円の大台を行く可能性も…?
 

 

 

 

 

 

約4年ぶりにしみけんリーダー週

 今回吉本新喜劇の4座長に加えてリーダー週を務める吉田裕さん・諸見里大介さんが全国各地をまわる為、ツアーが終了するまでのおよそ3ヶ月間は残りの3人で劇場の公演をまわしていく事になります。

しかし期間中にはかき入れ時となるゴールデンウィークがあります。公演数も通常より格段に多くなる為、3人でまわしていくのには限界があるのではないでしょうか。

 

 

 そこで今回”助っ人”として約4年ぶりにリーダーを務める事になったのが、「しみけん」の愛称で多くのファンに親しまれている、清水けんじさんです。

 

しみけんさんによるリーダー週は4月17日(火)よりよしもと祇園花月でのスタートを皮切りに、4月23日(月)~5月7日(月)はよしもと西梅田劇場で、さらに5月8日(火)~14日(月)にはなんばグランド花月でリーダー週を務めます。 

 

なんばグランド花月での新喜劇は原則テレビ放送用の収録が行われる事になっています。もしこのしみけんリーダー週において収録が実施されれば、実に4年ぶりとなるテレビ放映が実現する事になります。

 

 

この突然のビッグニュースにしみけんさんのファンは歓喜に沸いています。 

 

 

 

しみけんさんの座長就任に向けた新たなステップアップになる事を期待したいですね。

 

 

 

 

”4座長”の歴史は賛否両論の歴史

 過去の新喜劇タイムズでの記事で言及したようにこうした”4座長”といった括りで公演が行われるようになったのは、”3座長”時代のおととし(2016年)7月のことでした。

 

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吉本興業/よしもとクリエイティブ・エージェンシー

この頃から、「ベテラン座長」vs「人気若手座長」という構図が運営側によって作り出されていった印象があります。

 

小籔さんは2011年に「東京に吉本新喜劇を広める為」として大阪吉本から東京吉本に内部移籍するという形で活動拠点を移しています。 

しかし実際は「タレント」としてテレビなどで活躍し、後に全国的な人気を得ます。

 

これは吉本新喜劇を東京で放送するなど十分にアピールする機会がなかったという事情も関係しています*3

 

そうした中、2013~14年にかけてすっちーさんと吉田裕さんによるギャグ「乳首ドリル」が全国的な人気を獲得し、吉本新喜劇の大ブームが巻き起こります。

このブームに呼応する形で、小籔さんは2014年から毎年夏の時期に自身を座長に据えた吉本新喜劇の公演を東京で行うようになりました。

 

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吉本興業/よしもとクリエイティブ・エージェンシー 

 

しかしその後も全国ネットの番組に頻繁に出演するなど、たまに劇場に姿を見せて公演を行う事はあるものの、吉本新喜劇の普及に向けた積極的な活動はあまり見られません。

 

運営側が”4座長”の括りで新喜劇を売り出したい背景には、小籔さんの「タレント」としての全国的な人気・すっちーさんと藍ちゃんにおける安定した人気・小籔さんと辻本さんの不仲により分断状態にある事が事務所にとって好都合に働いた可能性が考えられるのです。

 

こうした動きは吉本新喜劇に慣れ親しんでいるファンの間で不満をためる事になり、運営側のやり方に対して賛否両論が巻き起こる事態へと発展しています。

 

特定の勢力を排除する事が吉本新喜劇の未来の為になるのか。運営側によるこうしたやり方が、新喜劇のこれからを担う若手座員の未来を奪ってはいないでしょうか。

 

 

 

 

 

 

 

未来のスターは育てたい、でも…。

 吉本新喜劇では昨年(2017年)夏から6人の座長に加え、吉田裕さん・信濃岳夫さん・諸見里大介さんを「ニューリーダー」いわゆる”副座長”として実際に公演を行う機会を与えて、新喜劇の今後を担う未来のスターを育てる取り組みを行っています。

 

もちろん、こうした事は過去に何度か行われていますので決して珍しい事ではありません*4

 

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吉本興業/よしもとクリエイティブ・エージェンシー 

 

しかし今回はそうした取り組みを行いながらも4座長による全国ツアーを実施するというのは、吉本興業が「未来のスターは育てていくが、これからはあくまで4座長の時代」 というのをアピールする狙いがあるものと思われます。

 

特に来年、2019年3月1日に吉本新喜劇は誕生からちょうど60年という節目の年を迎えます。こうしたアニバーサリーイヤーというのは例年以上にメディアに取り上げられる機会が多くなります。吉本興業としては節目の年である来年に向けて、”この4座長がこれからの新喜劇を率いるのにふさわしい存在”として大々的に宣伝する為の土台を、このツアーを通して作ろうとしているのかもしれません。

 

 

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吉本新喜劇オフィシャルサイトに掲載されているツアーの概要。内場座長・辻本座長を「ベテラン」、小籔座長・川畑座長・すっちー座長を「人気若手座長」と謳っており、世代交代を印象づける内容となっている。 

 

 

内場勝則さん・辻本茂雄さんは共に1999年の座長就任以来、絶大な人気を誇り特に2000年代は吉本新喜劇における”二大巨塔”としてその圧倒的な存在感を放ってきました。

 

2014年にすっちーさんが座長に就任したのを機に、これまで以上に多くのファンが新喜劇を生で観るために劇場へ足を運ぶようになりました。しかしそうした流れの中で一部の新喜劇ファンがすっちーさんではなく、内場さん・辻本さんの新喜劇を生で観たいと新たに流れ込み、加えて二人のNHKの朝ドラでの活躍ぶりがきっかけとなって再注目を浴びるなど、決して人気が衰えた訳ではありません*5

 

それにも関わらずこの4座長ばかりに焦点を当て、内場さん・辻本さんの人気そして彼らのファンの意見を無視して世代交代を強引に行おうとするやり方には納得がいきません。 

 

吉本新喜劇は大勢の座員が何十年にも渡って繋いできた”貴重な宝物”です。過去を切り離して考える事は出来ないのです。

 

過去の新喜劇における歴史を大事にしながら、一歩一歩前進していく。二度目の世代交代が起きようとしている今、これからの新喜劇はどう在るべきかが問われています。

 

この全国ツアーが世代交代が良い方向に進むきっかけとなる事を願うばかりです。 

 

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吉本興業/よしもとクリエイティブ・エージェンシー

*1:当初予定されていなかった徳島公演が追加となっています。

*2:愛知公演でのA席の前売券・東京公演での当日券。

*3:現在、吉本新喜劇は2013年7月よりTOKYO MXで遅れネットにより放送されています。

*4:1995年から4年間にわたって内場勝則さん・辻本茂雄さん・石田靖さんが、2012年から2年間にわたって清水けんじさん・烏川耕一さん・高井俊彦さんが務めています。

*5:内場勝則さんは『わろてんか』、辻本茂雄さんは『あさが来た』に出演。