新喜劇タイムズ

吉本新喜劇についていろいろ考えるブログです。

吉本新喜劇の公演の在り方について考える

 吉本新喜劇は現在、大阪・なんばにある「なんばグランド花月」と京都にある「よしもと祇園花月」を拠点に活動しています。

 

 吉本新喜劇は昼公演はもちろんですが、最近では夜公演も行う事例がよく見受けられるようになっています。ここ最近の公演数の増加は一体何を意味しているのでしょうか。

 

 

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なんばグランド花月の休館に伴い、新しくオープンしたよしもと西梅田劇場で代替公演を行う旨のチラシ。

吉本興業/よしもとクリエイティブ・エージェンシー

 

 

 

 

様々な新喜劇が繰り広げられる夜公演

 9月6日(水)と7日(木)になんばグランド花月で、『酒井藍としんきげき10』*1が行われました。

 

 

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吉本興業/よしもとクリエイティブ・エージェンシー 

 

 

 このイベントは毎回異なる10人が主役となって、新しいスタイルの新喜劇を作っていくというイベント『しんきげき10』に吉本新喜劇座長の酒井藍さんを迎えて行うというもの。

通常の新喜劇ではなかなかお目にかかれないメンバー同士の組み合わせで行うという事もあり、かなり斬新なイベントでした。

『しんきげき10』は今年の4月から月1回のペースで行われ、この『酒井藍としんきげき10』をもって幕を閉じました。

 

 

 吉本新喜劇の夜公演はこうした若手座員の育成に特化したものも含め、数多く行われています。イベントの種類を挙げると以下の通りになります。

 

  • 本公演の夜バージョン
  • よしもと新喜劇90(または100)
  • 単独イベントおよびライブ
  • 特定のコンセプトの下で実施される新喜劇

 

 

1、本公演の夜バージョン

 これは昼間に行われている本公演を少しアレンジしたもの。

本公演と同じく漫才・落語→吉本新喜劇というプログラムの基本的な流れは変わりませんが、前半の漫才・落語の部分が本公演の時より少し時間が短いのです。

 

ベテラン漫才師の出演無し、落語のパートが無いことが時間が短くなる理由です。そのため本公演では終演まで2時間以上かかるところが、この夜公演では1時間40分ほどと20~30分ほど短くなるのです。

 

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「よるも楽しめるグランド花月」として実施される本公演の夜バージョン公演。チケット料金が本公演よりも安いということなどもあり人気がある(本公演のチケットは前売:4,200円 当日:4,700円が基本料金。)。

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2、よしもと新喜劇90(または100)

 これは吉本新喜劇だけを90分(100分)行うという趣旨のイベント。

流れとしては、吉本新喜劇トークコーナー→ズッコケ体験・プレゼントコーナーとなります。

 

トークコーナーで座員たちのプライベートや舞台裏が聞けること、連日よしもと祇園花月で行われている「ズッコケ体験」をNGKで出来るというスペシャルな要素が多く含まれていることから、熱狂的な新喜劇ファンを中心に人気があります。

 

ちなみに公演の最後に実施されるプレゼントコーナーというのは、吉本新喜劇の本公演と同じ出演者全員のサインが書かれた色紙を抽選で選ばれたお客さんにプレゼントするというもの。とてもレアなサイン色紙ですので、抽選で選ばれたらラッキーですね。

 

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よしもと新喜劇90・100のチラシ。熱狂的な新喜劇ファンを中心に人気があるため、客層や雰囲気が大きく異なる。また、よしもと新喜劇100は辻本座長の回に実施されることが多い。

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3、単独イベントおよびライブ

 これは特定の座員を主役に据えて実施されるイベント。なんばグランド花月・道頓堀ZAZA HOUSE・よしもと祇園花月の3カ所で実施される場合がほとんどです。

 

公演の内容は多種多様で単に新喜劇だけをやるものもあればコント・漫才を披露するもの、トークコーナーや別企画を設けるものもあります。

 

きちんとした舞台で行うなんばグランド花月よしもと祇園花月での単独イベントと、簡素なステージで行う道頓堀ZAZA HOUSEでの単独ライブ、この2つのスタイルのイベントが新喜劇ファンの増加・多様化に拍車をかけています。

 

これらのイベントは主役となる座員のファンを中心に人気があり、イベント毎にそれぞれの座員のファンが連続して見に来ることもあり、かなりマニアックなものとなっています。

 

自分の推しの座員の新たな側面を見てみたい、そんな方におすすめなイベントです。

 

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単独イベント・ライブの一例。上はなんばグランド花月、下は道頓堀ZAZA HOUSEで実施されたもの。

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4、特定のコンセプトの下で実施される新喜劇

 これは文字通り特定のコンセプトに沿って行われる新喜劇のイベントです。

 

過去にはロミオとジュリエットを大胆にアレンジした『ロミオとジュリエット吉本新喜劇』、女性座員にスポットを当てた「女だらけの吉本新喜劇」シリーズが公演されました。

 

このイベントは開催期間が長いのが特徴で、吉本新喜劇の本公演+複数日にわたる夜公演という新喜劇座員にとっては非常にハードなものとなります。

 

開催期間が長いため観客にとっては観に行く日を幅広く選べるメリットがありますが、多く開催される分、新喜劇座員の想像以上の努力の数々がその裏にあることを忘れてはならないでしょう。

 

 

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「女だらけの吉本新喜劇」シリーズ第3弾となる『女子アナ新喜劇』。毎日放送の女性アナウンサーが日替りで出演した。

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よしもと西梅田劇場オープンとNGK休館

 今年9月25日、JR大阪駅近くにある西梅田スクエアに「よしもと西梅田劇場」がオープンしました。

 12月20日までは工事中のなんばグランド花月の代替施設としての役割を担います。

 

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オープン記念の記者会見に出席する出演者たち。

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  12月21日以降も公演が継続して行われることが決まっており、よしもと西梅田劇場自体は2018年8月25日までの期間限定の運用となります。

 

 ただ、よしもと西梅田劇場が建っている西梅田スクエアは現在も日本郵便の所有地となっており、いわば土地を借りる形で劇場運営に関する契約が結ばれています。そのため、今の状態では2018年8月26日以降は公演を行うことが出来ず劇場を撤去しなければいけない状況になっています。

 

このような状況にあるため、吉本興業は「契約延長も視野に入れ、常設劇場を目指したい」として契約の更新に前向きな考えを示しています。さらに、こんな話もあります。

 

 

 吉本には大きな戦略がある。旧大阪中央郵便局跡のYNT敷地は日本郵便、ひいては総務省所管の国有地。将来はここに大規模ビル開発が予定されており、階下に現在と同規模以上のNGKに匹敵する劇場をレイアウトしてもらう計画。 匿名を条件にある幹部は「吉本にとって芸人を抱えるだけでなく、彼らが実際に手見せ(舞台で実演)する大小いろいろな劇場の存在は不可欠。同じ大阪でもミナミのNGKとキタのYNTでは、お客さんの笑うツボが違うんです。これが芸人を育ててくれる」と打ち明けた。

 首都圏では東京をはじめ、埼玉や千葉に常設劇場があり、同社には東京育ちの芸人も多い。「東京の彼らがYNTでドカンと受けると、NGKと本当の意味で大阪吉本にとって車の両輪になってくれる」と青写真を描く。

 同社は来夏までYNTに有名どころの芸人を出演させ続ける計画。「動員数字を見て、日本郵便総務省に“西梅田の新ビルのにぎわいに吉本は欠かせない”と言っていただける自信があります」と、地域に懸ける思いは極めて熱い。

 ー キタの拠点 よしもと西梅田劇場、開場1カ月(大阪日日新聞)

 

 

 しかし、この点については契約延長の際に行われる日本郵便との話し合いの結果次第で大きく変わってくるのではないかと思います。今後の動向を注視していく必要がありそうです。

 

 

 

さて、よしもと西梅田劇場の公演内容についてですが、12月19日現在昼公演は「限定!おでかけなんばグランド花月」が行われており、夜公演は「よるもおでかけグランド花月」が実施されています。なお、単独イベント・ライブ等は実施されません。

 

 

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吉本興業/よしもとクリエイティブ・エージェンシー

 

上が「よるもおでかけグランド花月」のスケジュールと出演者を記載したチラシになります(このチラシは10月に行われる内容を記載したもの。)。

 

 よく見ると、月曜日を除いてひっきりなしに夜公演が行われていることが分かります。月曜日は吉本新喜劇の公演最終日、いわゆる「楽日」と呼ばれる日です。この日は次週の吉本新喜劇の稽古を夜間に行わないといけません。

もしこの日に夜公演をやってしまうと稽古の時間が後にずれて、翌日以降の公演に悪影響を及ぼす恐れがあります。そのため、月曜日は夜公演の実施日から外されているのです。

 

 ところで、なぜこれほど多く本公演の夜バージョンである「よるもおでかけグランド花月」が実施されているのでしょうか。

 

 今年7月になんばグランド花月の長期にわたる工事の実施が発表され、9月25日~12月20日のおよそ3ヶ月間にわたって休館となっています。そのためNGKが休館中は別の劇場、すなわちここではよしもと西梅田劇場を作って収益を確保する必要があります。

 

なんばグランド花月の裏口で出待ちをされた方の中には、新喜劇で使われるセット等が運び出される様子を見たことはないでしょうか。なんばグランド花月にはそれらのセットを数多く保管できるスペースがありますが、よしもと西梅田劇場にはありません。これは、新喜劇座員による単独イベントが実施できないことを意味します。

 

 

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よしもと西梅田劇場の関係者用出入口の様子。楽屋はプレハブ小屋という簡素な作りである。

 

 

 それにより、夜公演の数が減ってしまいますから「よるも楽しめるグランド花月」のように飛び飛びで行うわけにはいけません。

そこで、「よるも楽しめるグランド花月」の公演形態をそのままよしもと西梅田劇場に持ち込んだ「よるもおでかけグランド花月」を月曜日を除き連日実施しているのです。そうすれば、収益の減少もなく安定した劇場運営を行うことが出来るのです。

 

12月21日のなんばグランド花月リニューアルオープン以降は、公演形態も大きく変わりよしもと西梅田劇場のオリジナルプログラムとして再スタートします。どのように公演形態が変わるのか注目ですね。

 

 

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なんばグランド花月 RE-OPEN記念特別公演」の記者会見に出席した出演者たち。吉本新喜劇では本公演において2010年以来7年ぶりとなる内場勝則&辻本茂雄のW座長公演がお披露目される予定である。

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 公演数増加の意味とは?

 ここ最近の公演数の増加は、一体何を意味しているのでしょうか。

 下の円グラフは1999年吉本興業の事業内容の比率について示したものです。

 

 

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 円グラフのうち、赤が劇場に関する事業比率を示しています。一番多いのは”メディア”(青の部分)で、全体の6割を占めています。

 

 劇場の事業比率は1999年当時、メディア・不動産賃貸に続き3番目に大きいものであったことが分かります。残念ながら、現在の状況については資料がないため不明ですが事業比率が大きく変わっている可能性はあります。

 

 ここ数年のテレビ事業においては、世代を問わないテレビ離れによる視聴率の低下・広告料の伸び悩み・コンテンツの多様化を背景に緩やかに縮小傾向にあります。つまり、その減収によるしわ寄せが劇場運営にのしかかっている結果、公演数の増加に繋がったのではないかという事です。

 

 基本的な公演スケジュールは平日2回・土日祝日3回となっており、夜公演は実施を前提としたスケジュールに組み込まれていません。しかし現在では毎日のように夜公演が行われており、新喜劇座員にとって大きな負担となっています。

 

 総人口が緩やかに減少しつつある日本。

 日本人向けに大きな需要がある漫才・吉本新喜劇ですが、今後人口が減り続ければコンテンツの維持は徐々に難しくなっていきます。そうしたコンテンツの維持につなげるためにも、夜公演の休演日を設けて新しい芸を磨くための時間を捻出して余裕を持たせるなど、何か手を打つことは出来ないのでしょうか。

 

 

 

 

 

需要と供給のバランスを

 ここ最近の夜公演の増加は、仕事終わりのサラリーマンやOLなど昼公演を観に行くことが出来ない人たちに機会を与えると同時に、新喜劇においては各座員のファンの増加など新たな需要を生み出しています。

 

 

 しかし、これらの取り組みもやり過ぎたら意味がありません。夜公演が出来る状態にあっても、出演者の体調不良により中止に…。そんな事態に観客の皆さんは遭遇したくないことでしょう。

 

 

 吉本興業には劇場運営において、適切な頻度での夜公演の実施と共に出演者が体調を崩すことのないよう余裕のあるスケジュール編成・管理を徹底して欲しいと思います。

 

 

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*1:6日(水)は諸見里大介さんが、7日(木)は信濃岳夫さんがそれぞれ交代で出演。