新喜劇タイムズ

吉本新喜劇についていろいろ考えるブログです。

朝ドラ「わろてんか」について考える

今回の記事は少し趣向の異なった内容です。

 

 

 今年10月に放送がスタートした、NHK連続テレビ小説わろてんか』。

 

このドラマは、あの吉本興業の創業者・吉本せいをモデルに小さな寄席経営から始まり、やがて日本全国の人々を笑わせていくまでをコミカルに描いています。

ここでは、今回なぜ朝ドラで吉本興業の創業者の物語が描かれることになったのかについて考えます。

 

 

 

www.nhk.or.jp

 

 

 

f:id:kn0718:20171128023423j:plain

NHK 

 

 

 

 

笑いを商売に ー 寄席経営から始まる夫婦の物語

 今回『わろてんか』では寄席経営を始める主人公の北村てんを葵わかなさん(下画像・右)が、てんの夫で寄席「風鳥亭」の席主の北村藤吉を松坂桃李さん(下画像・左)が演じています。

 

f:id:kn0718:20171130025500j:plain

 

 初回(10月2日)で20.8%*1の高視聴率を記録して以降、週平均でおおむね20%前後を維持し続いている「わろてんか」ですが、この朝ドラがスタートする前に一つ話題になっていたことがありました。 

 

 

f:id:kn0718:20171218230036j:plain

 

 

 

 

 実はこの「わろてんか」に吉本新喜劇内場勝則座長が出演するという事で話題になっていたのです。

 

headlines.yahoo.co.jp

 

  内場さんがこのNHK連続テレビ小説に出演するのは1999年の「あすか」以来18年ぶりとなります。

 内場勝則座長が演じるのは、つぶれてしまった寄席の元席主・亀井庄助。のちに「風鳥亭」の従業員の一人として藤吉とてんを助ける重要な役目を担っていくことになります。

 

f:id:kn0718:20171212015617j:plain

わろてんか」における重要人物の一人・亀井庄助(内場勝則)。彼の細かな動作や表情にも注目してみよう。

 

 

こうした個性的な登場人物たちによって繰り広げられる「わろてんか」ですが、この「わろてんか」のモデルとなった吉本せいは実際どんな人物だったのでしょうか。

 

 

 吉本せいは1889(明治22)年12月5日に兵庫県明石市で米穀商の三女として生まれます。そして1910(明治43)年に大阪市東区(現在の中央区)内本町橋詰町の「箸吉(はしよし)」*2の二男・吉本吉兵衛(後に吉本泰三と改名)と結婚します*3

 

 

f:id:kn0718:20171213123217j:plain

 吉本興業創業者の吉本せい。1932年から16年にわたって吉本興業の初代社長を務めた。

 

 

  1912(明治45/大正元)年に吉本吉兵衛・せい夫婦は天満天神近くの寄席「第二文芸館」を買収、寄席経営の第一歩を踏み出します。その後も次々と寄席を買収し、現在のような寄席のチェーン化を進めていきました。

そして、これが後の『吉本興業』へと発展していくことになります。

 

 

f:id:kn0718:20171218023313j:plain

吉本吉兵衛・せい夫婦が1912年に買収した寄席「第二文芸館」。吉本興業の歴史はここから始まった。

 

 

 ちなみに、劇場の名前によく付けられている”花月”という名称は、1915(大正4)年に当時の南地法善寺にあった「蓬菜館(旧・金沢亭)」を買収した際に「南地花月」と名づけた事から始まったといわれています*4

 

 

 

 

ドラマ化が意味するものとは?

 

 NHK朝の連続テレビ小説は、時折実在の人物を基に物語を再構成しドラマ化して放送することがあります。

 

最近では波瑠さん演じる白岡あさが主人公の『あさが来た』(2015年秋~16年春)、芳根京子さん演じる坂東すみれが主人公の『べっぴんさん』(2016年秋~17年春)はいずれも実在の人物が主人公のモデルとなっています。

 

白岡あさのモデルは大阪を拠点に活動した実業家の広岡浅子、坂東すみれのモデルはアパレルメーカー・ファミリアの創業者の一人、坂野惇子です。職業に注目してみると、いずれの二人も日本経済の発展に大きく貢献した人物である事が分かります。

 

f:id:kn0718:20171215021405j:plain

平均視聴率23.5%(ビデオリサーチ調べ)と今世紀最高の視聴率を記録した『あさが来た』。吉本新喜劇座長の辻本茂雄さん演じる山崎平十郎、通称へぇさんの出演も話題となった(画像は週刊女性の記事より)。

 

 

こうした日本の発展に尽力してきた偉人に対してはその功績が高く評価されています。その一方でお笑い芸人に対しての評価は職業柄、低く見られる事も少なくありません。

 

これまで実在の人物を基にして朝ドラが制作される場合、そのモデルのほとんどは芸能関係者以外でした。

 

しかし、今回NHK吉本興業の創業者・吉本せいをモデルにした『わろてんか』を制作・放送することは吉本興業は日本の芸能文化の発展に貢献してきた」という、NHKからの高い評価を含んだメッセージであると考える事が出来るのです。

 

一方、今年(2017年)は吉本興業の創業105周年という節目の年でもあります。今回の「わろてんか」は”吉本興業創業105周年記念ドラマ”という位置付けで制作に至った可能性も考えられるのです。

 

 

f:id:kn0718:20171215023831j:plain

吉本興業が創業105周年にあたって発行した社史「吉本興業百五年史』。価格は税込みで11,340円である。

吉本興業/よしもとクリエイティブ・エージェンシー

 

 

f:id:kn0718:20171215024246j:plain

連続テレビ小説わろてんか」・京都編のキャストたち。発表は今年(2017年)4月に行われた。

 

 

 

原点に立ち返り今を見つめる

 

 現在の吉本興業の運営体制に対しては、強権的な経営手法および金銭的な面で批判されることが多々あります。

今回の「わろてんか」は物語を再構成しているため脚色された部分も多く、実際の吉本せいの人生に沿ってストーリーが展開されているわけではありません。

 

この「わろてんか」を通して創業者はどういう思いを抱えていたのか。そして創業者の人生を通して現在の吉本興業の経営手法の在り方について見つめ直し、どう変わっていくべきなのか。一人でも多くの方が考えるきっかけになる事を願っています。

 

 

f:id:kn0718:20171215025925j:plain

*1:関東地区。ビデオリサーチ調べ。

*2:高級料亭に箸を納める老舗荒物問屋でした。

*3:吉本せい - Wikipedia

*4:吉本興業ヒストリー|吉本興業株式会社 1915年の欄。