新喜劇タイムズ

吉本新喜劇についていろいろ考えるブログです。

吉本新喜劇オーディションについて考える

 近年吉本新喜劇が注目されている中で「新喜劇の座員になってあこがれの舞台に立ちたい」、そう思う人は少なくないのではないでしょうか。

 

現在、吉本新喜劇に入団するためには原則オーディションに合格しないと入団することは出来ません。でも、そんなオーディションの事についてあまり深く考えたことはないのではないでしょうか。

 

そこで今回は吉本新喜劇で不定期に開催されている一連のオーディションについて考えてみたいと思います。

 

 

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吉本興業/よしもとクリエイティブ・エージェンシー

 

 

 

 

 

過去最高の合格者数を出した”金の卵9個目オーディション”

 5月7日(日)に行われた「小籔・川畑・すっちー 3座長新喜劇特別公演 vol.3」のエンディングで、今年1月から2ヶ月間にわたって開催された金の卵9個目オーディションの合格者がお披露目されました。

 

 

 

 

 

 

 今回のオーディションの合格者数はこれまでで過去最高の17人となりました*1

 

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今回のオーディションにおいて、なぜこれほどまで多くのメンバーを採用したのでしょうか。

 

 

 

吉本新喜劇は現在、西日本を中心に地方公演が行われていたり、東京公演が年に一回行われているように徐々に関西から全国区に拡大しつつあります。

 

各地で公演が行われるとなると本公演と地方公演の間でのメンバーの調整が重要になってきます。

その際、調整できるメンバーの数が少ないと公演に支障をきたす恐れがあります。

 

その為に、人数を増やして余裕をもたせる、吉本新喜劇をさらに全国区に広げる事を意識して吉本興業は今回のオーディションでこれほどの人数を採用するに至ったのではないかと考えています。

 

 新喜劇タイムズでは今回、このうち2人の男性座員に注目しました。

 

 

 1人目はジャボリ・ジェフさんです。

今回の入団でジャボリさんは、吉本新喜劇58年の歴史において初の外国人男性座員となりました。

また、合格時の年齢としては最高の42歳での入団となりました(これまでの最高は後藤秀樹さん【金の卵6個目】の40歳《2012年当時》。)。

 

 

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 吉本興業/よしもとクリエイティブ・エージェンシー

 

 

  ジャボリさんはアメリカのコロラド州出身。アメリカ人の両親のもとで育ち、8歳の時から始めたテコンドーで、21歳の時に全米3位を記録。吉本新喜劇で現在の座長体制がスタートした1999年に来日し、外資系の人事として東京で働いていたといいます。

 

その後、人材紹介業など職を転々としたのち、昨年末に大ファンだった吉本新喜劇のオーディションの告知を見つけ応募。今回の入団に至りました。

 

 

 

吉本新喜劇の舞台ではこれまで、ブラジル3兄弟シリーズに代表されるように外国人の役をいずれも日本人が演じてきました。

今回のジャボリさんの入団によって、吉本新喜劇の公演における外国人の役の表現の仕方が今後徐々に変わっていく事があるかもしれません。

 

吉本新喜劇はあくまで日本人を対象にした芸能ですが、今回のジャボリさんの入団を機に今後オーディションで外国人が入団する可能性は必ずしもないとはいえません。

 

日本在住の外国人が急増する中でこれからどれくらい吉本新喜劇グローバル化が進む可能性があるのか考えてみる必要がありそうです。

 

 

 

 2人目は永田良輔さんです。

 

永田さんは入団される前に俳優として「時効警察」シリーズなど数多くの刑事ドラマに出演されていました*2

 

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 吉本興業/よしもとクリエイティブ・エージェンシー

 

 

永田さんはこのお披露目の際に、「怪しく中性的な雰囲気の男の子でいきたい」と述べました。

 

 

 吉本新喜劇ではこれまで中性的な性格を持つ人物が登場する場合、ほとんどが女装した"オネエ"の類に入る人の役でした。

 しかし、現実には同じような人物全員が女装をしているわけではありません。

 

 今後、永田さんがどのような形で起用されていくかはまだ分かりませんが、吉本新喜劇のストーリーの中でLGBTに関する描写が増える事があるかもしれません。

 

 

 

 

 

 

吉本新喜劇オーディションの歴史

 今回、過去最高の合格者数を出した「金の卵9個目オーディション」ですが、そもそも現在のようなオーディションはいつから始まったのでしょうか。

 

 

1959年に吉本新喜劇が旗揚げされて以降、入団する際は「研究生」として入団する形がとられてきました。

 

しかし1988年、期限までに観客動員数が目標値に達しなければ吉本新喜劇自体を廃止にするという、いわゆる『新喜劇やめよっカナ⁉︎キャンペーン』が展開されることになります*3

 

この際に、当時の吉本新喜劇のベテラン勢が退団や脇役にまわるなどして初めての世代交代が起こり、システム自体も大きく変わることになります。

 

 

1990年代以降、吉本新喜劇の座員を募集するオーディションが不定期で実施されるようになりますが、当時は現在とは違う名前でオーディションが実施されていました。

 

 ―当時は吉本新喜劇ジュニア(YSJ)ですね。
その時のオーディションで受かったのが、7人で今も5人残ってます。
五十嵐サキちゃん、伊賀健二秋田久美子ちゃん、今東京へ行ってる国崎恵美ちゃん、そして僕ですね。
何年かぶりのオーディションで、僕らの上が藤井(隆)兄さんで、僕らのあとはオーディションがなくて、師匠の弟子から来た人とか、その後、NSC新喜劇コースの今別府とか、それから金の卵という感じですね。

よしもと新喜劇 座員紹介 第51回 山田亮 |MBS

 

 

 その後、2004〜05年にかけて第1回目の金の卵オーディションが実施され現在に至ります。

 

次のオーディションがいつ開催されることになるのかは分かりませんが、今後の座員の人数の変化等を考えると、短くても2年後あたりに開催されることになると思います。

 

 

 もし、入団を考えている方がいましたら今から次のオーディションに向けて着実に準備を進めていきましょう。

 

 

 

吉本新喜劇にはNSC出身者が多い?

 

 現在、約100人ほどの座員を抱える吉本新喜劇ですが、金の卵オーディションにおいて一般からの入団に加えて吉本のお笑い学校『吉本総合芸能学院(NSC)』からの入団者も大勢います。

 

 

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 この人数の比率は一体何を意味するのでしょうか。

 

 

 NSCについては知っている方もいるかもしれませんが、NSC入校≒吉本入社という扱いとなります。つまり、NSCに入校する事は実質吉本の芸人である事と同じ意味になるのです。

 

実際、NSCにいつ入校したかどうかで芸歴が決まりますし、新喜劇に同期入団した人たちの中でも「兄さん」「姉さん」とツイッターなどでやり取りするケースも見受けられます。

 

 

 もし、一定程度の実力がある入団希望者のうち、一般から多く採用するとなるとどうなるでしょうか。

 

 この場合、新たに人を雇わなくてはいけなくなりますからその人たちに支払う給料が新たに発生します。その分だけ捻出しなければいけない資金が多くなるのです。

 

 

 しかしNSC出身者から多く採用するとなれば、入団したとしても吉本興業全体の芸人の総人数は変わりませんから、「内部移籍」という形で資金面などに大きな影響を与えることなく、入団させることが出来るのです。

 

 

 ただ、近年の芸能界を取り巻く環境の変化や少子高齢化が進む現状を考えると、一般からの採用をもう少し広げた上で審査すべきではないかと個人的には思います。

 

 

 その方が、”ごり押し”と批判されるリスクを減らすことができますし、より実力のある人を発掘できるより良い機会になるのではないかと思います。

 

 

 

 

本当にやる気だけの問題?退団者が多い現状

 

 近年は「乳首ドリル」で一躍名をはせた吉田裕さんや、ギター芸でおなじみの松浦真也さんなど金の卵オーディションで入団した若手座員が注目を集めつつあります。

 しかし、まだ大半の若手座員は人気を得るための必死の努力を続けている状況です。

 

 

 ご承知のとおり、お笑いの世界が大変厳しいものであることは言うまでもありません。しかし、吉本新喜劇は漫才師などとは違う事情を抱えています。

 

 

これまで金の卵オーディションでの入団ののち、人数に幅はありますが退団者が続出するという事態が繰り返されてきました。

 

 

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やる気もなく出番が与えられない状態が続いて退団となれば言うまでもありませんが、ある程度の出番が与えられているにもかかわらず退団に踏み切るというケースが後を絶ちません。

 

 

これまで長年芸能界と共にけん引してきたテレビなどのメディアに対する信用の低下や、コンテンツの多様化、さらに少子高齢化により入団希望者が減る可能性のある現状を踏まえると、若手の育成がこれまで以上に重要になってくるのは間違いありません。

 

 

吉本興業にとっては「ただ足を運んでお金を落としてくればいい」だけの事なのかもしれませんが、果たしてそれでいいのでしょうか。

 

若手座員のPRをこれまで以上に強化するなどの策を打つことはできないのでしょうか。

 

 

もし、今後若手座員が今以上に減ってしまえば吉本新喜劇を続けることは難しくなってしまいます。若手座員の育成は急務なのです。

 

 

 

 

(2017年12月12日追記)

 

  今年の11月から新たに金の卵第10個目オーディションの募集がスタートしました。締切は12月29日(金)までとなっています。

 

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 吉本興業/よしもとクリエイティブ・エージェンシー

 

 第9個目合格者のお披露目からわずか半年で次の入団希望者を募集するのはなぜなのでしょうか。

 

 

 実は今年9月25日にオープンしたよしもと西梅田劇場で、なんばグランド花月がリニューアルオープンする12月21日以降も公演が継続して行われることが決まったのです。

 

 

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よしもと西梅田劇場の公演の継続について知らせる、吉本興業提供のスマートフォンアプリ『ラフピー』 の画面。

 

 

 これにより吉本新喜劇は、なんばグランド花月よしもと祇園花月よしもと西梅田劇場の3つの劇場を拠点に活動していくことになります。

そうなると公演数も自然と増加しますから、より多く座員を増やして余裕を持たせる必要が出てきます。

 

そのために金の卵第10個目オーディションの募集を行っているのではないか、そう考えられるのです。

 

 

 

 

 また、金の卵第10個目オーディションの募集と同時並行で『吉本新喜劇脚本家大賞』という企画が併せて行われています。こちらは締切が12月15日(金)となっています。

 

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吉本興業/よしもとクリエイティブ・エージェンシー

 

 吉本新喜劇では原則として各座長に専属の脚本家がついています(但し、小籔座長以降の4座長に関しては回によって変わる場合もあり。)。

しかし先程も挙げたようによしもと西梅田劇場の公演継続に伴い公演数が増加するため、その分より多くの新喜劇の台本を仕上げる必要があります。

 

今回の脚本家大賞は、脚本家全体の人数を増やして公演の準備がスムーズに行われるようにするために行っているのではないか、そう考えることが出来るのです。

 

 

一方で、このような見方も出来ます。

2017年12月現在の公演は現6座長に加えて吉田裕さん・信濃岳夫さん・諸見里大介さんの3人の”リーダー”を加えた9人体制で実施されています。

 

また以前の記事でも取り上げたように、座長就任を目指している清水けんじさん・アキさんの存在を考えると、この脚本家大賞は新座長就任に伴い専属となる新たな脚本家を育成するために行っているのではないかとも考えることが出来るのです。

 

 ただ、仮に新座長就任があるとすれば問題は発表と就任公演の時期ですね。脚本家大賞が終了してどれくらい経ってからの発表となるのか、そしていつ就任公演が実施されるのか。これらの点にも注目していく必要がありそうです。

 

 

 

 

座員たちの努力だけでは限界があります。将来吉本新喜劇に入団したいという人の夢を潰さない為にも、ファンの皆さん等で声を上げてあらゆる可能性を探っていく必要がありそうです。

 

 

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吉本興業/よしもとクリエイティブ・エージェンシー

*1:但し、諸般の事情により1人が辞退しています。

*2:永田良輔 - Wikipedia

*3:当時設定された目標観客動員数は1989年10月から1990年3月までの半年間で延べ18万人《1日平均に換算すると約1000人》でした。