新喜劇タイムズ

吉本新喜劇についていろいろ考えるブログです。

【吉本新喜劇2027 第4回】「吉本新喜劇 佐藤太一郎企画」から考える吉本新喜劇の未来

 吉本新喜劇の若手座員にスポットを当てながら、吉本新喜劇の未来について考えていくシリーズ『吉本新喜劇2027』。

 今回は吉本新喜劇での”熱い芝居”で注目され、独自に立ち上げた自身の企画と共に日々成長を続ける佐藤太一郎さんについて特集します。

 

 

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吉本興業/よしもとクリエイティブ・エージェンシー

 

 

 

 

 

3年前の公演を”新たな青春物語”として再演

 7月4日(火)と5日(水)になんばグランド花月で、吉本新喜劇 佐藤太一郎企画その19『風のピンチヒッター'17』が上演されました。

 

 この作品は佐藤太一郎さんが吉本新喜劇に入団する前に所属していた劇団「ランニングシアターダッシュ」(現在は解散)で1997年に上演された作品「風のピンチヒッター」を基に作られた作品です。

 

 

野球への愛だけは人一倍あるものの、エースにはなれない平凡な男子高校生を中心に弱小野球部が奮闘する姿を描いた青春物語です。

舞台は球場を思わせるシンプルな美術で、佐藤は主人公のミナミを演じました。転校生として大阪府立第三高校にやってきたミナミ。時同じくして、廃部目前の弱小野球部の救世主と噂された少年も転校生として第三高校へ。ミナミとぶつかった拍子に帽子が入れ替わり、ミナミが救世主に間違われることに。ところがミナミは驚くほどの運動音痴。野球への愛はあるものの、即戦力としては頼りにならず...。ですが、ミナミが入部したことをきっかけに、徐々に野球部に活気が戻り、ある夏、甲子園出場をかけて数々の奇跡を呼び起こしていくのでした。  

よしもとニュースセンター:NGKを走り抜けた! 熱い演技と笑いで魅了した「吉本新喜劇 佐藤太一郎企画その19『風のピンチヒッター'17』」 

 

  今回の公演は千秋楽である5日(水)の方に私は観に行きましたが、感じたのは普段の新喜劇の公演と大幅に客層や雰囲気が違うことでした。

 

通常の新喜劇の公演では観客は親子連れや若年層の人が多いのですが、今回は親子連れが少なく年齢層もやや高めな印象を受けました。普段新喜劇を観ることがあまりない人達がたくさんNGKに足を運んだことで新喜劇を観に行く時とは全く違う空気に包み込まれているような感じがしました。

 

 またNGKの客席に入るための各入り口に暗幕が備え付けられていますが、その暗幕の使用そして極力照明を点けずに館内を真っ暗にするなど、より世界観に入るための工夫が徹底されているところもまた普段とは違う雰囲気を感じました。

 

 

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廃部寸前の弱小野球部を甲子園出場へと導く剣道部のサカモトを演じた吉本新喜劇の鮫島幸恵。

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劇中では普段の新喜劇でもお馴染みの目玉いじりなど新喜劇の要素も所々盛り込まれていて、笑いを誘う場面もありました。

公演終了後は大勢の観客によるスタンディングオーベーションが行われ、私も参加させていただきました。それは私を含め、この舞台が多くの人々の心に残るものになったことを表しているのではないでしょうか。

 

 

 

 実はこの作品は3年前にも、ZAZA HOUSEで上演されています。

家に帰った後、下の動画を見てみましたが同じ物語であるとはいえ、今回とはまた違った熱気に包まれているような感じがしました。

 

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キャストは今回と大幅に異なり、吉本新喜劇からはレイチェルさんが参加しています。また、ステージの大きさも小さかったためどうしても表現の幅に限界があったのではないかと思います。

 

今回の舞台ではステージの大きさはZAZA HOUSEの何倍も大きく、特に激しく動き回るシーンでは動くことの出来る範囲が広かったためかなり躍動感あふれるものになっていたと思います。

 

 

 2日間にわたって行われた今回の公演は本番の数日前まで満席になるかどうかギリギリの状態でしたが、直前に両日の公演共に完売。全てが最高潮の中で幕を閉じました。

 

 

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 『吉本新喜劇 佐藤太一郎企画』とは?

  では今回の『風のピンチヒッター'17』で19回目を数えた「吉本新喜劇 佐藤太一郎企画」とは一体どんなものなのでしょうか。

 

佐藤太一郎企画はこれまでに以下の舞台が公演されています*1

 

  1. 『一番の誕生日!』(2010年6月・京橋花月)
  2. 『LOVE IS BUBBLE』(2011年9月8日・∞ホール大阪)
  3. 『今宵の月のように』 (2012年3月6日・5upよしもと)
  4. 『Wedding Eve』(2012年9月23日・5upよしもと)
  5. 『グッド・コマーシャル』(2013年3月9日・5upよしもと)
  6. 『愛をくらえ』(2013年10月10日・5upよしもと)★
  7. 『ヒトダマ』(2014年3月16日・5upよしもと)★
  8. 『風のピンチヒッター'14』(2014年6月25日~28日・ZAZA HOUSE)★
  9. 『ダイヤル38』(2014年9月10日・ZAZA HOUSE)
  10. 『冷静と情熱と男と女のあいだ』(2014年12月19日・なんばグランド花月)★
  11. 『ヒトダマ』《再演》(2015年3月11日・ルミネ the よしもと)
  12. 『夏の魔球'15』(2015年6月19日~21日・近鉄アート館)
  13. 『グッド・コマーシャル』《再演》(2015年7月22日~23日・なんばグランド花月)★
  14. 『STANDARD BOOKSTORE』(2015年9月17日~18日・スタンダードブックストア心斎橋)★
  15. 『do with cafe』(2016年1月20日~21日・do with cafe)
  16. 『未来の今日』(2016年3月4日~6日・恵比寿エコー劇場)
  17. 『THE END'16』(2016年6月23日~26日・YES THEATER)★
  18. 『闘う男』(2017年2月28日・HEP HALL)
  19. 『風のピンチヒッター'17』《再演》(2017年7月4日~5日・なんばグランド花月)

  

 分析してみると2010年6月に第1回の公演が行われて以降、回を追うごとに1年間の上演回数が増加し、よしもとの常設劇場だけでなく大阪や東京の小劇場などでの公演も行われていることが分かります。やはりそれだけ多くの人の注目を集めると共に、様々な可能性を追求したい太一郎さんの姿勢がこの公演の数々に表れているのだと思います。

 

公演は若手の新喜劇座員が多数出演したものや、関西の劇団で活躍する俳優が共演するものなど、内容も多岐にわたります。吉本新喜劇 佐藤太一郎企画 その7『ヒトダマ』では座長の内場勝則さんが特別出演したこともあります。

 

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太一郎さんはYoutubeに公式チャンネルを開設しており、公演のダイジェスト動画には”「吉本新喜劇 佐藤太一郎企画」は年間数回にわたって佐藤太一郎プロデュースにより行われる公演です。お芝居を中心に様々な企画に佐藤太一郎が挑戦します!”と企画の趣旨が動画の中で紹介されています。

現在上記の19の舞台のうち★印が付いている7つの公演のダイジェストが公式チャンネルで公開されていますので、お時間のある方は公式チャンネルをのぞいてみて下さい。

 

 

www.youtube.com

 

 

 笑いをとる事だけが全てなのか?

 

  吉本新喜劇は新喜劇という言葉に則れば、「芝居」と「笑い」の要素が織り交ぜられた一つのエンターテイメントです。

最近の新喜劇ブームでは後者の「笑い」の方がよく注目を集めがちですが、それが「芝居」やストーリーなどの他の要素の上に成り立っていることを忘れてはいけません。

 

 

佐藤太一郎企画は次回で記念すべき20回目を数えます。

つい先日には本人のツイッターで次回の公演が、その5・その13で上演された『グッド・コマーシャル』を東京で初めて上演することが発表されました。

 

 

 

 

今後の活躍がますます期待される太一郎さんですが、気になる動きもあります。

 

 昨年の12月に行われた「よしもと新喜劇お正月スペシャル」では内場座長や辻本座長の回に出演しているメンバーのほとんどが登場しなかったことに対して批判が殺到しました。

そうした中で、すっちー座長の回に多く出演しこの佐藤太一郎企画を通して注目を集めつつあった太一郎さんも上記のメンバー同様に出演しなかったのです。

 

吉本新喜劇の公演は通常、座長と脚本家などとの間で相談しながらキャスティングが決定するといいます。しかし、お正月スペシャルの場合は複数の座長が出演しますからそうはいきません。

 

またお正月スペシャルは吉本新喜劇の全キャストが集結することの出来る唯一の公演ですから、運営側の姿勢が顕著に表れやすくなります。

 

このお正月スペシャルに太一郎さんが出演しなかった点については、個人的な推測になりますが、運営側である吉本興業吉本新喜劇のPRにおいて「芝居」重視の座員は求めていないというメッセージを意味しているのではないかと思います。

 

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昨年行われた「よしもと新喜劇お正月スペシャル」のキャスト一覧。総人数は記録が確認できる2009年以降で最も少ない37人となった。

 

これではせっかく自身の成長のために汗をたくさん流し、色んな新喜劇座員と共演してきた公演の数々がゼロ同然となっては失望しかありません。

 

吉本興業は笑いだけに全力を尽くす人しか見ない事務所なのでしょうか。吉本興業には芸能活動の幅に関してもっと自由度を高めてもらいたいものです。

 

 

 

 

 

詳細についてはまだ未発表ですが、記念すべき20回目の佐藤太一郎企画がついに始動しました。日々熱い芝居で全力疾走する太一郎さんの今後の活躍ぶりに注目です。

 

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 吉本興業/よしもとクリエイティブ・エージェンシー

*1:その他にも、多数舞台が公演されています。